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瀬良英介ニュースレター

瀬良英介の一般業界向け
飼料・畜産トピックス
2007年9月 (168)

 

パナマ運河拡張工事は7年後の開通100年記念に完成

米 国から日本や極東・東南アジアに農産物や穀類・大豆などを輸出する主な港としてはメキシコ湾の中央に出られるニューオルリンズが有名です。近年、中西部で 生産される大豆などはワシントン州、オレゴン州、カリフォルニア州に向けた鉄道貨物列車を使い、西部沿岸諸州の港から積み出されるケースが増えています。 北ダコタ州や南ダコタ州など中西部といっても北よりの生産地域、或いは、ミネソタ州西部、アイオワ州西部、ネブラスカ州などやや西よりの生産地域も鉄道で ワシントン州・オレゴン州の港に貨車積みコンテナー輸送で食品大豆などを出すケースがあります。

然し、バージ を筏に組んだときの総積載量が通常のパナマックス一隻5万トン積みに相当するほど積めるので、やはりイリノイ河、ミズーリ・ミシシッピー河経由でバージを ニューオルリンズのリバー・ターミナル・エレベーターまで下げ、サイロ荷揚げ、短期間のサイロ貯蔵、本船積み込みをしてパナマ運河経由で日本や東南アジア に出すというのが多いのです。

パナマ運河が開通したのが1914年ですが、メキシコ湾・大西洋と太平洋を結ぶ 重要なルートで米国が法的にも永年に渡り所有し運営管理を行ってきていました。1977年に時のカーター大統領がパナマ国と調印を交し法的所有権をパナマ に移しましたが、完全にパナマ国に所有権を移行させ調印に達するのにほぼ20年の歳月を要しています。つまり1957年ごろから返還折衝が始まっていま す。互いの利害得失と譲歩で接点を求めて合意に達するのにかかった歳月は短くはありませんでした。

今月の三日 (2007年9月3日)にパナマ運河の拡張工事が始まり最初の発破がかけられたことは一部のニュースでも報道済みで周知のことですが、これはパナマ政府傘 下の自治運営行政機関であるパナマ運河オーソリティが主体となって行うものです。拡張工事はコロラド州デンバーに本社を置きグローバルに活動している建設 エンジニアリング会社が行いますが、完成するのは冒頭にもあるように運河開通から100年目に当る2014年を目指していますから今から7年後です。完成 すると今までよりも太平洋と大西洋を結ぶ重要で難しいロックを通行できるキャパシティが倍になるということです。スーパーサイズの貨物船がロックを通過で きるようになることやコンテナーを満載したスーパー・パナマックス船が通過できることになります。

一般的には 大豆や穀類の輸送の効率化のみが取り上げられますが、大型タンカーによる石油などの運送も可能になるので朗報だとする向きが多いことは事実です。ただ、日 本を含む東南アジア諸国やアジア本土の主要な港でスーパー・パナマックス・クラスの超大型船を受け入れられる体制が間に合うかどうか、或いは、受け入れの ための設備投資が必要で妥当かどうかという輸入国の思惑もでてくるでしょう。スーパー・パナマックスになれば、現在のパナマックスが満潮時でないと沖から 入港・接岸できない港では、浚渫をふくめバースの延長工事や積み下ろしに必要なバケット・アンローダーやベルト・コンベーヤー、自動サンプラー、サイロな どの追加建設が必要になります。いずれにせよパナマ運河の拡張工事が完了した暁には、太平洋をまたぐ海洋貿易に大きな影響を与えることは間違いありませ ん。

穀類、大豆や飼料原料の観点からみれば、52億5000万ドル(約6000億円)もかかる膨大な拡張工事 が完成する7年後にエタノール価格や状況がどうなっているかという不確定要素があり、また、パナマ運河を通行するときの通行料がいくらになるかということ とミシシッピー河をバージで下げる輸送費などが絡んできますから、米国でも中西部の農業関係者の一部には穀類などをパナマ運河経由で輸出することで国際競 争力がつくかどうかを疑問視する向きも若干あります。

ブラジルも大豆などをアジア向けに輸出するとき、パナマ運河を使っていますし、ブラジル国内の河川、道路、施設などインフラ整備に力を入れていることは無 視できないでしょう。ブッシュ政権は、パージ運行に不可欠なミシシッピー河上流やイリノイ河のロック・ダムの改築予算をよしとしていませんが、アイオワ州 のグラスリー共和党上院議員など何人もが米国が今まで輸出農産物の輸送面で国際競争力が維持できたのは国内にはりめぐらされている素晴らしい水路であるこ とを強調しています。最終的にはミズーリ・ミシシッピー河上流、更に、ミシシッピー河に入るイリノイ河沿いのロック・ダムの改築が行われることは必至であ ると筆者は予測しています(瀬良、2007)。

 

 

 

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