蛋白質と澱粉が乳牛の乳生産、乳脂肪酸組成、飼料摂取量などに与える影響
ポ ルトガルの大学研究者カブリータら4名とニュージーランドの大学研究者1名を含む計5名がコーンサイレージ・ベースの飼料に濃厚飼料を合わせた飼料を乳牛 に与え、蛋白質と澱粉が乳牛の飼料摂取量、乳生産、及び、乳脂肪酸組成に与える影響を報告しています。細部を省いて簡単に内容を御紹介しましょう。
本 報告は12頭のホルスタイン種乳牛(経産牛、平均体重631kg、産乳日数平均77日、産乳日量平均39kg)を用い、コーンサイレージ・ベースの飼料に 給与蛋白質と澱粉の濃度を変えて給与した3回の4×4ラテン方格で最後の期間を省いた不完全チェンジオーバー試験方法です。試験期間は各3週間でした。飼 料はTMR(コンプリートフィード)として与えていますが、総乾物中、コーンサイレージが45%、粗い切断の小麦ワラが5%、濃厚飼料が50%というもの です。
四つの処理区は全て等カロリーにし、粗蛋白質(CP)と澱粉の濃度のみが乾物中で異なるようにして います。それらの区は次のようなものです:低CPと低澱粉(LPLS;CP14%・澱粉15%)、低CPと高澱粉(LPHS; CP14%・澱粉25%)、高CPと低澱粉(HPLS;CP16%・澱粉15%)、高CPと高澱粉(HPHS; CP16%・澱粉25%)。
低 CPと低澱粉(LPLS;CP14%・澱粉15%)試験区は乾物摂取量、乳生産量、乳蛋白質濃度、及び、乳糖生産量が低かったのですが、恐らく、ルーメン 微生物に対してのルーメン分解性蛋白質の供給が足りなかったのと乳牛に対してのグルコース新生に必要な養分が足りなかったことによるだろうとしています。
高 蛋白質飼料(HP)と低CPと高澱粉飼料の間には差がありませんでした。これはこのような飼料がルーメン内の微生物に対して分解性蛋白質の要求量が満たさ れていたし飼料摂取量も抑えられていませんでした。加えて、グルコース新生の養分増加がアミノ酸を使うことなく産乳牛の泌乳中期の栄養要求量を満たしたこ とによると示唆されます。粗蛋白質濃度を更に上げるとプラズマ・ウレア濃度を上げ飼料中窒素を乳汁中窒素に変える効率が下がりました。乳汁中脂肪酸組成は 澱粉と蛋白質の供給によって影響を受けていましたが、その中でも特に澱粉による影響が大でした。加えて、飼料中の澱粉濃度を上げると明らかに飼料中の多価 不飽和脂肪酸が乳汁(牛乳中)に移行するのが減りましたが、牛体の脂肪組織に脂肪酸が流れ込むのが増えることを示唆しています。また、脂肪酸のC15:0 とC17:0は新しく牛体組織の中で合成されていると示唆しています。
処理区の配合割合
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4処理区 |
原料 乾物中% |
LPLS |
LPHS |
HPLS |
HPHS |
14:15 |
14:25 |
16:15 |
16:25 |
コーンサイレージ |
45.00 |
45.00 |
45.00 |
45.00 |
小麦ワラ |
5.00 |
5.00 |
5.00 |
5.00 |
蒸気ペレット濃厚飼料配合
(総飼料DM中50%) |
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とうもろこし粒(粉砕) |
――― |
14.60 |
――― |
14.60 |
シトラスパルプ |
18.60 |
4.75 |
13.86 |
――― |
コーングルテンフィード |
7.50 |
7.50 |
7.50 |
7.50 |
大豆ミール |
5.45 |
4.67 |
10.20 |
9.42 |
ヒマワリ粕 |
14.50 |
14.50 |
14.50 |
14.50 |
水素添加油脂 |
0.76 |
0.25 |
0.76 |
0.25 |
糖蜜 |
1.25 |
1.25 |
1.25 |
1.25 |
炭酸カルシウム |
0.39 |
1.04 |
0.55 |
1.21 |
第二リンカル |
0.28 |
0.17 |
0.11 |
――― |
食塩 |
0.27 |
0.27 |
0.27 |
0.27 |
重曹 |
0.45 |
0.45 |
0.45 |
0.45 |
酸化マグネシウム |
0.28 |
0.28 |
0.28 |
0.28 |
ミネラル・ビタミン・プレミックスA |
0.27 |
0.27 |
0.27 |
0.27 |
計 |
100.00 |
100.00 |
100.00 |
100.00 |
注 A:ミネラル・ビタミン・プレミkックス1kg中:Vit A; 2,525,000IU/kg: Vit D3; 500,000IU/kg: Vit E; 4,000mg/kg: Co; 106mg/kg: Cu; 800mg/kg: Fe; 5,000mg/kg: I; 155mg/kg: Mn; 23,040mg/kg: Se; 76mg/kg: Zn; 40,250mg/kg
異なる飼料中蛋白質と澱粉濃度は主に大豆ミールを高蛋白質飼料に使い、また、主にとうもろこし粒(粉砕)をシトラスパルプの替わりに高澱粉飼料に使っています。等カロリーにするために低澱粉飼料には水素添加油脂を使っています。
本報告は表7点と図1点を含む11ページに及ぶ論文です。詳細に興味のある方は米国酪農学会誌(J. Dairy Sci., 2007; 90:1429-1439)を参照なさることをお勧めします。
余 談ですが、この報告では蛋白質濃度を調整するのに二次的な副原料として大豆ミールを使っていますので配合割合は低めに設定されています。試験がポルトガル で行われた関係で、主な蛋白質原料としてはその地域で一般的に入手できるヒマワリ粕を使っています。ですから、同じような試験をカナダか米国で行った場合 は、ヒマワリ粕の配合割合に近い高レベルで入手し易く、栄養単位当たりに割安になる大豆ミールが使われることになります。現在の日本でも米国と同様な傾向 になると推定してよいでしょう(瀬良、2007)。 |