米国でのブロイラーや七面鳥の孵化率
日本のブロイラー(肉用鶏)生産は遺伝的に海外の原種鶏、原々種鶏の成績に間接的、或いは、直接的な影響を受けています。反面、日本国内でのターキー(七面鳥)の生産は極僅かですが、将来、生産が増える過程では同様の影響を受けます。
本 トピックスでは、米国オレゴン州立大学の研究者二名(T.Schaal and G. Cherian, 2007)が行った米国でのブロイラーと七面鳥の卵の孵化率について簡単にご紹介しましょう。研究者は1985年~2005年の20年間について調査・報 告しています。
この調査は米国のブロイラーと七面鳥のコマーシャル孵化場での孵化率を1985年から 2005年にわたり調べたものです。2005年のブロイラーの卵を孵化場に回した個数は110億個で七面鳥のそれは3億4300万個でした。1985年の ブロイラーの卵を孵化場に回した個数は56億個で七面鳥のそれは2億5800万個でした。これらの個数は1985年のそれらから比べ、2005年では 98%、及び、33%の増加がブロイラーと七面鳥に起きたということです。この期間のブロイラーの卵の孵化率は79%から82%であり、七面鳥の卵の孵化 率については76%から80%でした。この期間におけるブロイラーや七面鳥群の栄養、遺伝的選抜と管理方法は孵化率の向上に繋がっていませんでした。孵化 率の向上が無かったことによる2005年の経済的損失は5億ドル($1 = \120、600億円)でした。
研究者が調査するのに使った参考資料は、米国農務省経済研究サービスや、全米農業統計サービス、また、米国農務省の孵化生産年間サマリーなど多くの公的数値を元に調査、計算しています。
年間孵化率は、参考資料などから次のような算式を使っています。
(総雛数、或いは、育すうに回した羽数) / (孵化用にセットした総卵数)×100%
年間の孵化率による経済的影響は次のような算式を使っています。
(孵化用にセットした総卵数 - 総雛数、或いは、育すうに回した数)×(農家が雛か育雛に払った年間平均価格)
孵化の損失(ロス)には孵化しなかった卵(受精しなかった)、孵化前の受精卵(胚)の斃死、販売できなかった雛や育すう、或いは、雛の生産過剰などが含まれています。
前 述の孵化用卵の個数の増え方の大きさに比べ、孵化率そのものはブロイラーと七面鳥のいずれについても大きな増加と言えるものはありませんでした。また、コ マーシャル農家が実際に雛を一羽いくらで買い取るかということはしなくても、本報告では1985年のブロイラーの初生雛一羽当りの価値 を$0.172($1 = \120換算で、¥20.64/羽)とし、育すう一羽当りの価値を$0.96($1 = \120換算で、¥115.20/羽)としています。同様に2005年のブロイラーの初生雛一羽当りの推定価値を$0.21($1 = \120換算で、¥25.20/羽)とし、育すう一羽当りの価値を$1.15($1 = \120換算で、¥138/羽)としています。ブロイラーと七面鳥の孵化率の向上が無かったことによる2005年の総経済的損失は5億ドル($1 = \120換算で、600億円)でしたが、1985年の産業界への経済的損失は2億6000万ドル($1 = \120換算で、312億円)でした。この損失は1985年から年々増え、2005年が前述の5億ドル(600億円)になるのです。
過 去20年間、ブロイラーや七面鳥種鶏群の遺伝的選抜、栄養、管理は進歩を遂げました。その結果として鶏の成長が増加し、屠体の歩留まりは増え、市場出荷ま での日数は減りました。しかしながら、孵化率は過去20年間にわたり、ほとんど横這いであったと言っても過言ではなく、オレゴンの研究者たちは、他の研究 者(Hocking and Robertson, 2005)たちが指摘している点、つまり鶏を大きくするように遺伝選抜をしてきた結果として種鶏群が産する鶏卵の質は低下したことに触れています。本報告 の研究者たちは、経済的効果の高い遺伝形質を残しながら孵化率を改善することにもっと力を入れ、種々の方法を模索し作り出す必要があることを指摘し、加え て、今後の更なる孵化率向上へ向けての研究が養鶏産業に与える経済的効果に貢献するとしています。
本報告は短いものですが、公的な統計から算出した長期間にわたる調査報告ですので、中々興味深いものです。原文に興味のある方は、図3点をつけた研究ノート報告を米国家禽学会誌(2007 Poult. Sci. 86:598-600)で御覧になることをお勧めします。
余 談ですが、日本のブロイラー用配合・混合飼料の生産量は近年約372万トンですから、総配合・混合飼料の生産量(約2415万トン)の15%です。育す う・成鶏(採卵)用の配合・混合飼料を合わせれば、総配合・混合飼料の45%程度を占めることになり飼料業界として小さい市場ではありません。また、ブロ イラー用飼料に良質、且つ、嗜好性の高い蛋白質副原料として使われる大豆ミールの量は約83万トンで、飼料設計中に平均22%入っています。米国のブロイ ラー飼料中の大豆ミール使用割合よりは低いですが、日本の配合飼料の中では、畜種別にみて一番高いレベルで使われています。
ブ ロイラー用飼料にはメチオニンなどアミノ酸類も使う面が多いのですが、年間約2万1000トンの総アミノ酸類使用量の中でブロイラー用飼料に使われるのが 約9000トンですから、畜種の中では、大豆ミール同様に一番多く使われています。育すう・成鶏(採卵)用飼料には100万トンの大豆ミールが使われ、飼 料設計中に平均16%弱入っています。因みに、アミノ酸類も約5000トン弱使われています。非常に高い蛋白質のレベルを必要とする育すうや雛の飼料も含 んでいることを考えれば、大豆ミールやアミノ酸類の使用量や割合はまだもう少し高くなる可能性があると言っても過言ではありません。
ブロイラー飼料を生産する側から見ても、本トピックスにあるように孵化率が低いことによる経済生産性の損失には関心があります。孵化率が更に向上していけば、それに伴う栄養や管理面での更なる向上も異なる角度から捉えることができるからです(瀬良、2007)。 |