瀬良英介の一般業界向け
飼料・畜産トピックス
2005年4月 (110)
(110)アイオワ州の乳牛の成績は全米では上位10州に入る
アイオワ州立大学での授賞晩餐会に出席しましたので、トピックス109番は、それらについて書きました。この回では、アイオワ州の酪農成績や母校が建設を進めている酪農試験農場などについて触れてみましょう。
私は、個人的にはアイオワ州の酪農は残念ながらかなり衰退してきていると思っていました。然し、実際は、大学の関係者や酪農家から聞くと、むしろ盛り返してきていると考えてもよい面があるようです。酪農学科主任教授はリー・キルマー(Dr. Lee Kilmer)先生ですが、スタッフには酪農エクステンション・スペシャリストとして小型トラックで飛び回って活躍しているレオ・ティムス(Dr. Leo L. Timms)準教授や乳牛の栄養生理を専門にしているハワード・タイラー(Dr. Howard D. Tyler)準教授が居ます。
先ず、中西部の12州の中で酪農家の戸数を見ますと2003年から2004年にかけてアイオワ州は戸数が2500戸から2,420戸へと3.2%下がっています。最も、米国の酪農家戸数が2003年から2004年にかけて70,375戸から66,830戸へと5.6%下がっています。また、中西部12州の総戸数が2003年から2004年にかけて39,470戸から37,250戸へと5.6%下がっていますからアイオワの下がりかたは中西部12州の中のオハイオ州の下がりかたの4.5%よりも低く、一番、戸数減少が少ないです。
乳牛(成牛)の産乳成績では、2004年の全米ランキングの第9位に入っています。アイオワ州の成績はローリング・ハード・アベレージで年間1頭当り9040kg(19,912ポンド)です。これは酪農関係者は御存知のように乳を搾っていない乾乳牛の頭数も入っています。搾乳牛だけで捉えた305日乳量で表したら優に1万キロを超えています。
前述の全米ランキングの第1位はワシントン州で10,375kg(22,852ポンド)です。そこからアリゾナ、アイダホ、コロラド、カリフォルニアなどネバダに至る上位8州が2万ポンドを越しています。
因みに中西部の酪農のメッカであるウィスコンシン州の年間1頭当り産乳量は8079kg(17,796ポンド)で第22位、ペンシルバニア州は8,128kg(17,904ポンド)で第20位、イリノイ州が8,393kg(18,486ポンド)で第17位です。
アイオワ州の2004年度(暦年)総乳生産量は174万5千トンです。周辺6諸州の中ではアイオワ州の生産量に比べて三分の一程度の生産量である南ダコタ州と並んで生産量は前年よりも1.7%伸びています。残りの周辺5諸州は全て下がっています。そして193,000頭居るアイオワ州の年間1頭当り産乳量の9,040kgは、周辺6諸州と比べると前年に比べ+502kg(+1,106ポンド)伸びていますが、これは非常に高い伸びです。次にずば抜けて高い伸びを示した周辺6諸州では、南ダコタ州の+308kg(+679ポンド)、ミズーリ州の+236kg(+519ポンド)があるのみで、ネブラスカ州は−187kg(−411ポンド)の減少です。
アイオワ州の乳牛は、その年に出来る粗飼料の質と量にもよりますが、大体、年間1頭当り平均2.7トン程度の濃厚飼料が与えられています。これは、ウィスコンシン州の3.0トンやミネソタ州の2.9トンより若干低いのですが、その理由は、恐らくコーンサイレージを多く与えている地域では大豆ミールを使った蛋白質サプリメントを多めに与え、良質なアルファルファ・ヘイレージを多く与えているところでは、蛋白質サプリメントを減らし、ミネラル・プレミックスで調整していることなども絡んでいるでしょう。また、産乳フェーズ、乳量、ボディ・コンディションなどとの兼ね合いをよく把握し、飼料給与のバランスを取ることを飼料会社のテクニカル・セールスも大学のエクステンション関係の専門家も良く啓蒙し、普及に力を入れていることもあげられるのでしょう。
このようなことから酪農エクステンション・スペシャリストを担当しているレオ・ティムス準教授は、アイオワ州の酪農家を高く評価し、この地域での酪農は、市場性を考えると衰退するよりもまだ伸びる傾向があるとし、将来も戸数は若干減っても、全体としては家族経営が主流で伸びると見ています。ただ、規模が小さいままの家族経営の酪農では、どうしても糞尿処理に対しての設備投資が出来ないので、汚染問題が発生しやすくなることが問題だとも指摘しています。
アイオワ州立大学には、私にとっても学生時代の思い出が多い大学の酪農試験場がありましたが、それは古くなり、他の開発・用途に使うからという理由で二年前に閉鎖されました。アイオワ州の酪農は衰退気味だと思っていた私は、産学協同を重視する研究・教育・普及のための新しい酪農試験農場を作るとは思っていませんでした。
去年になって、大学の畜産・酪農学部のキルマー教授やティムス準教授、周辺の酪農家、関連産業界などの強いサポートが大学の理事会と州の政治家を動かし、新しい酪農試験農場を作ることが決定したことは、地域の家族経営の酪農家にとっても飼料会社にとっても朗報だったことでしょう。規模としては、乳牛6種を網羅する500頭規模の将来を見据えた搾乳施設を持つ農場で、試験・教育・普及の三本柱に必要な施設、補充用の育成牛飼育施設の全て作ると聞いています。今の予定では、順調に行けば2007年の春ごろからは、新農場に乳牛も導入できる予定にしているようです。周辺の州立大学の農場が縮小か閉鎖を考えているとき、アイオワ州立大学が作る農場は、周辺諸州の酪農にも良い影響を与えることになるのでしょう。今回の授賞のための訪問で新しい農場が作られることを知り、やはり酪農部門の名誉卒業生としては大変に嬉しいことでしたので、授賞の席でも忌憚なく新農場についての感想を申し上げました。私個人としては、農場が完成したら、再度、視察を兼ねて訪問したいと考えています(瀬良、2005)。